愛の酸化

愛の酸化

いわゆる酸化(さんか)という概念は、

酸素と他の元素や分子が反応することや、

酸素が電子を他の元素から奪うことを言う。

酸素があるところに生鮮食品を放置しておくと、

その食品は酸素と反応して、みるみる劣化して、

品質が損なわれる。

だから、食品の包装袋には脱酸素剤であるエイジレスが

同封されており、このエイジレスのお蔭で、

包装袋のなかの食品は酸化をまのがれる。

このことからもわかるように、

酸化とは決して良いことではない。

というこの常識をどういうわけか拡大して、

それを誇張して、酸化こそが悪の権化、

酸化こそが老化の最たる原因、

酸化物質の活性酸素こそが病気の主要原因、

と抗加齢学会とか、アンチエイジング医学の世界では、

酸化はとにかく徹底的に殲滅しなければならない

悪魔かテロリストのような扱いである。

このような文脈から、いまでは

アンチエイジングには抗酸化物質の摂取が良い、

という常識が一般化している。

わたしたちが日々、毎瞬間吸っているこの空気のなかには、

酸素が約20%も含まれている。

だから、この青い空の下のこの地上世界は、

十分にチョー危険な危機的な酸化環境にあるのだ。

ということは、わたしたちも本来は

この体を酸素と触れあわないようにし、

エイジレスがたくさん置かれた無酸素の空間に

逃げ込むべきなのだ。

エッ、だって、そうでしょ?

そうしなければ、酸素と触れあったこの体はみるみるうちに

酸化して劣化して老化して、細胞膜もDNAも傷ついて、

そのうちに遺伝子まで破壊されて、

いろんな病気を発症して、挙げ句の果てに

絶命の転帰が待っているに決まってるじゃん。

でも、どういうわけか、決して、そうはならない。

わたしたちはこの猛烈な酸化環境にあっても、

決してみるみるうちに酸化などせずに、

じつにゆっくりとおだやかに時間をかけて歳を取り、

うまくすればテロメアの切符のすべてを使い切って、

120歳まで生きられるようにできている。

アレッ、酸化は悪の権化じゃなかったっけ?

いやいや、酸化はじつはにっくきヒール、

ワルモノではなく、たぶん

僕らのヒーロー、アンパンマン(笑)

酸化があるからこそ生命がある、

酸化があるから生きていられる、

酸化こそが命の恩人、

みんなみんな生きているんだ酸化のお蔭〜♪

なのだ。

酸素はたしかに強烈な酸化作用をもたらす。

しかし、生命はその酸素の強力に電子を奪う作用を

逆に利用して、電子を効率的に集めて、

その勾配を利用してATPモーターを回転させる事に成功した。

その酸素を電子の受容体に利用して、

ハイテクのATPジェネレーター役を担っているのが、

我が細胞内の細胞内小器官であるミトコンドリアだ!

そして我が血液のなかのヘモグロビンが酸素をしっかりと

吸着することで、酸素が他の分子と反応しない仕組みも

すでにちゃんと出来上がっている。

ヘモグロビンとミトコンドリアが酸素の吸着役となり、

ミトコンドリアが酸素を電子の受容体にすることで、

ひとは一日に体重の1.4倍ものATPを産生しているのだ!

つまり人体にとってのエイジレス、脱酸素剤が

ヘモグロビンとミトコンドリア
というわけだ。

人体にとっての脱酸素剤であるヘモグロビンの総数は、

なんと40億兆個!

そして毎秒400兆個のヘモグロビンが新しく作り替えられている。

おなじく人体にとっての脱酸素剤であるミトコンドリアの総数は、

諸説あるが中間をとって1京8000兆個!

人体中のすべてのミトコンドリアをつなぎ合わせると、

地球を2000周できる途方もない長さになる!

この地球2000周の長さのミトコンドリアの一部に異常が

発生すると、ミトコンドリアはこれを自分たちで希釈し、

もしも使用不能ならばそれを切り捨てて、

消去する方法(マイトファジー)すら獲得している。

それだけではない。

ミトコンドリアは自身が宿る細胞が使い物にならない程に

劣化したり老化すると、アポトーシスという機序の

引き金を引いて、その細胞を丸ごと消去してしまうのだ。

ミトコンドリアはATPと体温を生成するだけでなく、

自分たちミトコンドリアの品質管理をし、

また宿主細胞の品質管理までおこなうのだ。

この優秀な二つの脱酸素剤であるヘモグロビンとミトコンドリアが

あるからこそ、ひとはこの猛烈な酸化環境にあっても、

決してすぐには酸化もせず、劣化もせず、老化もしないのだ。

抗酸化物質が人体の酸化を抑制できたとするエビデンスは、

いまだかつてひとつも獲得されていない。

そもそも酸化それじたいは悪ではないのだ。

だから抗酸化物質の大量摂取は人体の酸化現象を邪魔することで、

逆に人体に悪い影響を与える危険性すらある!

抗酸化物質の摂取は、プラシーボと暗示効果でいくらか効いている、

という程度で良しとするのが無難だろう。

ミトコンドリアが酸素を利用して酸化を促進することで、

わたしたちはATPと体温を得ている。

つまり酸化のお蔭でひとは生きているのだ。

酸化さまさま。

酸化がなければわたしたちは一瞬も生きられない。

ミトコンドリアの愛の酸化がわたしたちを生かしている。

あなた〜の燃える手で〜、わたし〜を抱きしめて〜♪

そう、わたしたちはミトコンドリアの燃える手で、

抱きしめられた存在なのだ!



2017年08月19日 Posted byハリィー今村 at 05:44 │Comments(2)

この記事へのコメント
お久しぶりです。新しいブログは、とてもスムーズに理解が進みます!前ブログは何度も読み直したり私には難解でした。光伯堂でお世話になってから、3年程時間が経過しました。訪れる機会がなかなか作れずにいますが、是非またと考えています。その際はよろしくお願いします。
Posted by 東京のNです at 2017年08月22日 17:06
東京のNさんへ

いつも当方のブログをお読み頂きまして、ありがとうございます。

新ブログを始めるにあたっては、わかりやすく読みやすい、を最大のミッションとしました。

スムーズに理解が進む、というNさんのお言葉で、新ブログのこの最大のミッションは達成できた、と感じております。

生理学や医学の用語は、そのまま使用すると、とても読めないドン引きに難しい語りになってしまう。

とはいえ、レベルを落としては、読んでも面白くもなんともない。

難しいようだけど、読める、読める、のギリギリのスリルのあるライン。

このへんを打ち出すには、やはり年季が要りますね(笑)

美は乱調にあり。

完全なる調和ではない美しさ、面白さ。

次なるミッションは、そのへんになってきます。

Nさん、機会がございましたら、また当院へお越しください。

お待ちしております。
Posted by ハリィー今村ハリィー今村 at 2017年08月22日 19:47
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