体で味わう

体で味わう

いま朝の5時前だが、

パソコンのあるこの部屋の向こうの山からは、

ヒグラシやニイニイゼミやミンミンゼミの鳴き声が聞こえる。

夏の朝に聞くセミの声は、なんともいえない叙情がある。

当院の浜松市の常連さんが先日に、こんな話をしてくれた。

なんでもその常連さんのご実家の二軒となりで、

かの本多宗一郎さんが、クルマの修理工場を経営していたそうだ。

そんな関係か、その常連さんのお宅には、

本多宗一郎さんが書いた色紙があった。

その色紙には、望遠鏡と月の絵の横に、

ドイツ人はこれで月を見る、と書かれ、

尺八と月の絵の横に、日本人はこれで月を見る、と

そんなニュアンスの色紙だったという。

なんでも、その常連さんのお父さんがお亡くなりになった時、

この色紙も散逸してしまったそうだ。

いま持っていれば、お宝鑑定団に出せたのに、

と、その常連さんは笑っていた。

色紙の真意は、つまり日本人は情緒の民族で、

月を科学的に解析するよりも、

月を愛でて、それで尺八を吹いて、

自然を科学するよりも、自然と親しみ共にあろうとする。

そんなことを本多宗一郎さんは

その色紙で言いたかったのかもしれない。

世界のホンダの創業者の哲学は、

やはり格別な感じがする。

セミがあんな小さな体で、

なぜこんなにも大きな鳴き声を出せるのか?

なにか科学的に解析すれば、それなりの理屈がつくのだろうが、

おっと、月を望遠鏡で見る愚で、

そんなことをしていると、セミの鳴き声を素直に楽しめない(笑)

体を健康に保つ方法を探るのも、

月と望遠鏡、月と尺八の、二つの方法がありそうだ。

科学で徹底的に体の構造や機能を分析し、

そうして合理的な健康法を編み出す。

これが科学時代の現代の健康法の常套手段だ。

だが、この月と望遠鏡方式とは違う

月と尺八方式もある。

体と共に感じ、体が気持ちいいと思う事をおこなう。

あるいは、健康に天寿を全うしたひとをみて、

それを見習う。

わたしは、どちらの見方も出来るが、

最近は月と尺八方式が好みだ。

鍼灸指圧の良さを科学的に説明することは、

いくらでも出来る。

しかし、いくら鍼灸指圧の良さを科学的に説明して、

科学的に納得しても、

尺八は吹いてみなければその音色を楽しめないのと同じで、

鍼灸指圧も実際に受けて味わってみないことには、

その真の良さはわからない。

頭で理解するのではなく、

体で味わう。

それが鍼灸指圧を楽しむ流儀だ。

セミの鳴き声、本多宗一郎さんの色紙の文言から、

今朝はこんな事を連想した。



2017年08月05日 Posted byハリィー今村 at 05:06 │Comments(0)

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